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重修本草綱目啓蒙
三十二/永禽
鸕鷀 しまつどり〈和名抄〉 まとり(○○○)〈古歌〉 う 一名鶿〈爾雅〉 烏頭網〈事物珠紺〉 鷀鷧〈同上〉 納膾場小尉〈清異錄〉 摸魚公〈事物異名〉 慈老〈正字通〉 盧滋〈楊州府志〉 摸魚鳥〈類書纂要〉
水中に在て能魚お捕る、色黒き鳥なり、大抵雅形の如くして、背肩は微褐色お帯ぶ、長喙にして末微曲り、脚に蹼あり、老する時は頂白し、昼は水に入り魚お飲、夜は山林樹上に宿す、棲こと久ときは、遺屎石壁に粘し、霜雪の如く落花の如し、草木皆枯稿す、是蜀水花なり、和名抄にうのくそと訓ず、此鳥江海共にあり、食用には海産お上品とす、土州にてしまつ(○○○)と呼、古名の残れるなり、江産は性惡し、土州にてかはつ(○○○)と呼、濃州岐阜にて、数十お縻畜ひ、夜力ヾり火お焚き、舟上より鸕鷀お放て、香魚お捕へしむ、其漁お鵜飼と雲、その舟お鵜舟と雲、精功なる者は一人にて鸕鷀十四五隻お使ふものあり、他州にも此漁あれども、岐阜の巧なるにしかずと雲、岐阜に用ゆる所の鸕鷀に、うんざう、ほうじろ、がんう、きんちやくづけ、ごまばら等の名あり、香魚お捕しむるものはごまばらなり、川に居るものは用るに堪へずと雲ふ、大和本草にしまうは毛羽にほしありと雲、これお蔵器の説の魚鮫とするは穏ならず、古より鵜の字お用てうと訓ずるは非なり、鵜は鵜鶘にして別物なり、
○按ずるに、鵜飼の事は、産業部漁業篇に詳なり、