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保元物語

新院被召為義附鵜丸事
鵜の丸と雲御剣おぞ被下ける、此御ばかせお鵜の丸と名附らるヽ事は、白河院神泉苑に御幸成て、御遊の次に鵜おつかはせて御覧じけるに、殊に逸物と聞えし鵜が、二三尺許なる物おかづき挙ては落し、かづき上ては落し、度々しければ、人々恠みおなしけるに、四五度に終に喰て上りたるお見れば、長覆輪の太刀也、諸人奇異の思おなし、上皇も不思議に思召、定て霊剣なるべし、是天下の可為珍宝とて、鵜丸と被付て御秘蔵有けり、鳥羽院伝へさせ給ひけるお、故院又新院〈○崇徳〉へ被進たりしお、今為義にぞ給ける、