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風俗文選
三/譜
百鳥譜 支考
世に人お葬る者ありて、常は顔など見合すべきにもあらねど、なすべきわざあれば、呼て酒のませ、価おもやりつ、しかるに鵜といふものは、詮なき鳥なるべし、早川に魚などかづきあげたる、己れならずとも、網しても得つべし、さるものならば、わきまへぬ事もあるべきに、人の手にかはれて追はみたる魚おも、白地に吐せて、それおめでたしとさゞめかし、笹の葉打きせて、おくりもおくられもする人は、鳥よりは一しほもおとり侍らんか、鷹は羽の下に鳥おくみ敷て、誉れお人にも見られむと思ふは、せめて名の為にもなさばなりぬべし、さらば此ふたつのものお、我友となさば、打おきたる心のいとまもなからん、