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重修本草綱目啓蒙
三十二/水禽
魚狗(○○) そび〈古事記日本紀〉 〈旧事紀和名抄〉 かほよどり(○○○○○)〈藻塩草〉 少微〈雉囊抄 勢州雲州 四国〉 しやうびん〈四国〉 せび〈大和本草〉 せみ〈同上〉 かはせみ〈京〉 しよに〈備前作州〉 しよにし(○○○○)〈伯州雲州〉 しや うにん〈播州〉 そな〈仙台〉 すなむぐり かはきじ〈共同上〉 じよな〈下総〉 そびな〈甲州〉 るり〈羽州〉 すどり〈中国防州〉 えびとり〈駿州沼津〉 ひすい〈薩州〉 むぐり〈加州〉 かはしやうびん〈濃州〉 一名 釣魚翁〈閩書泉州府志〉 翠雀〈事物異名〉 碧衣〈同上〉 水翠〈江南通志広東新語〉 翠孥〈正字通〉 金鳥〈郷薬本草〉
流水の傍閑かなる林下に多し、常に水上に飛羯し、或は水上の樹枝に止て、魚の俘出お窺ひ、水に没して含食ふ、十に一お失せず、大さ雀の如く、頭頬は綠色にして青文雑り、背は綠褐色、翼と両覆は白青色、尾は短くして灰色、眼辺に黒紋あり、眼の左右淡紅色、喉は白色、腹は赤褐色、喙は長大にして黒色、脚亦黒くして短し、肉は臊腥にして食ふべからず、此鳥水岸土中に於て巣お作ると雲、一種きせみは形雀より小く、色浅青黒にして白斑あり觜長し、
翡翠(○○) かぼどり〈呉竹集〉 やましやうびん やましやうび みやまそび みやましやうびん やまひすい〈薩州〉 やまぞな(○○○○)〈仙台〉 あかひすい みづよろ(○○○○)〈城州大悲山〉 やませみ〈大和本草〉 みぞご い〈同上同名あり〉 みづごひどり きよもり とうがらしこま(○○○○○○○)〈野州川股村〉 あまがへる(○○○○○)〈同上同村〉 やま すヾ(○○○○)〈同上筑波山〉 みづほしどり(○○○○○○)〈同上粟野村〉 こまどり(○○○○)〈同上同村〉 一名翠碧〈埤雅〉 紺燕〈同上〉 翠鷸〈通雅〉 扁雀〈名物法言〉 翠雀〈訓蒙字会〉 山翠〈江南通志広東新語〉 魚翠〈広東新語〉
此鳥常に深山幽渓に飛翺し、市井に出ること希なり、形魚狗に似て大さ鴿(どばと)の如し、全身赤色にして光りあり、目は淡青色腹は赤色、尾は短く喙長大にして、本淡黒末赤し、脚も黒色なり、雨中に必鳴く、声こま鳥に似て長し、故に野州の方言あり、此鳥と魚狗とは飼に生魚お以てす、故に畜もの希なり、魚お食へば暫くして骨お吐出す、蚯蚓お食へば後泥丸お吐出す、白頭鳥(ひよどり)の木実お食ひ、暫くして核お吐出すると同じ、筑前のやましやうびんは、色紫にして、首に冠毛あり、夜は光ありて火の如し、一種青黄色にして腹紅なり、一種形魚狗の大さに倍して、紫色腹紅なるおからしやうびん(○○○○○○○)と雲ふ、