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沙石集
八上
雞子殺酬事
尾州に若き女房、子にくはせんとて、雞のかい子おあまた殺してけり、或時夢に、女人一人来て、我子の臥たる枕もとにうちいて、子はいとおしきぞかなし〳〵といひて、よに恨めしげなる気色にて、うちなき〳〵すると見て、この子なやみて、ほどなくうせぬ、おとヽのありけるが、又なやみける時も、さきの女人すこしもたがはず、さきのやうにいふと見て、その子もうせにけり、当時有人也、