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沙石集
七上
眠正信房事
和州菩提山の本願僧正御房に、忠完正信房と雲僧有けり、あまりにねぶりければ、ねぶりの正信とぞ申ける、〈○中略〉或る夜、九番鳥(○○○)の鳴けるお、眠耳に御所に忠完々々と召すと聞なして、事々しく御いらへ申て御前へ参る、いかになに事ぞと被仰れば、召の候つると申す、さる事なしと仰ありければ、鳥の猶空に声のするお指さして、あれに召の候つるとぞ申ける、