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近世奇人伝

河内清七
河内の国日下の里に樵お業とする、貧者清七といへるものあり、母は富人の家の乳母たりしかば、貧しき世お経ても、口腹のことに倹することあたはず、〈○中略〉或日母鶉のあぶりものおのぞみたりしに、其日は暮たれば、明日朝とぐ起て、市に行てもとめんと用意したる時、窻にあたるものの音せしかば、童どもが戯に、土くれなどうちけるよとおぼえながら、いでゝ見るに、鶉二羽落て有ければ、喜びてとくすゝめけり、