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百千鳥

金鳩〈綾鳩とも〉 餌かい 〈きび、黒米、 えごま 菜のくきの所おきざみて用ゆ〉
大きさ白子鳩に少し大きく、鳥の風総たひみじかく太し、頭浅黄鼠に白き眉有、雄は肩に白き毛少し計有、背の色青光に金色あり、胸より腹までみなむらさきにて、觜朱のごとく、足は白子鳩に同色也、尾こい鼠色にて甚短し、巣もなす物なり、雌は総体色あしく白き眉、頭の浅黄も少し、むね腹茶色にて少し紫の心持有、見事成物也、玉子は十六七日の内に開る、鳩の類の玉子は何もにつ充産物也、
長荘鳩(○○○) 餌かい 〈きび、えごま、黒米、〉
長荘鳩は文字いろ〳〵に書、大きさ銀鳩の半分より余程ちいさく、毛色鼠に赤みあり、羽子毎に薄黒きふ有、能き子そだての鳥少き物なり、子は二つ充能開す物なれども、兎角捨て又外に菓おなす、盛り至て強ゆへなり、若鳥は玉子の生よわく、其上巣も猶捨る物にて、とかく古鳥程よく出来る也、此秘事は跡に書印ごとし、二月頃より九月まで巣にかけ、夫よりは寒き故、子育つ事なし、雌雄わけおくべし、
銀鳩(○○) 飼かい 右同断
大きさ白子に同じ、総身至て白く奇麗にて、觜薄桃色に足赤し、能子出来る物なり、子上りに煩ひ有、跡に書しるすごとく手入有、よき銀鳩の筋は今少し、鳥至てちいさく、首に輪の心持なく白し、兎角えりに珠数かけの心有り、又白子に合たるは、薄がき色に珠数毛有ものなり、あしゝ、子は年中なす、冬寒きかた結句子は能なす物也、
白子鳩(○○○) 飼かい 右同断
大きさ銀鳩に同じ、毛いろ薄がき色也、女烏のかたは少しかき色こく、雄はしらけたり、しかし銀鳩白子ともに雌雄分りがたく似たる物也、盛り付て知るなり、巣も又銀鳩同事、年中子おなす、
南京鳩 飼か、い 右同断
大きさ白子鳩によほど小ぶりにて、毛色又白子に似て、総身かき色につよし、頭浅黄にてきれいなり、巣も随分なす物也、春より秋の内計巣おなす、冬は不産、
しやむろ鳩 えかい 同断
大きさ白子に少し小ぶり、又同じくらいのもあり、総身きじ鳩の毛色に似て、黒きふあり、えりに黒白のごまふの毛多く有、これおしやむろ毛と雲、巣もなす物なり、声かわりたる物にて面白く淋しき物也、
べんがら鳩(○○○○○) えかい 同断
大きさ白子鳩に似て、毛色は白子に同じ、首に黒き毛、白子のごとく珠数かけ有、巣もなす物なり、
孔雀鳩(○○○) えかい 同断
大きさ土鳩によほど大ぶり、毛は土鳩のごとくさま〴〵有、子能出来る物なり、両羽おはさみ置なり、尾初お押て尾のひらきあしく成ゆへ、両羽お切也、又巣親にする鳥は、番共に尾数多は、片はしの尾お、四五枚づヽ両羽おはさみ、中お五六枚残し置がよし、女も同じ、右にてつがひくち格別よし、
じやがたら鳩(○○○○○○) えかい 同断
土鳩に辰じ、土鳩のすぐれて大き成物にて、さして替りもなし、不宜品也、此外に又日光より出る、青鳩よわき物なり、小豆お喰ふ、すりえに付て飼がよし、尺八鳩抔といふも、此類にて同じ物なるべし、声至て淋しき物にて面白し、又山鳩に白子鳩に似たるあり、声かわりあり、
大鳩(○○) 餌かい 同断大きさ烏に少し小ぶりにて、総身濃ひ鼠、首長く鱗立毛あり、觜青くして足鳩のごとく赤し、えりに白き毛少し有、めづらしき類也、