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文恭院殿御実紀附錄

いつの頃なりけむ、表方より彩羽の家鴿お献ぜしが、いと麗しければ、殊に御寵愛ありし、其明る年この家鴿塒せしに、かの彩羽翠翼かはりて、尋常の山鴿となる、これは全く偽作のものと思ひたどられたり、このこと掛りの者より聞え上しに、頓てそこに至り見玉ひて、是にて実の鴿なりと仰ありしと、こは有難き完仁の御深慮なり、たてまつりしものは、いかばかり慚愧の事にやありし、