重修本草綱目啓蒙

三十二/原禽

雀 すヾめ いなおほせどり〈古歌〉 一名馬婦鳥〈彙苑詳註〉 青喜〈清異錄〉
小虫〈本草原始〉 家常膃肭剤同上 賽〈雞林類聚〉 家雀〈盛京通志〉 佳賓〈名物法言〉 家賓〈大倉州志〉 姦雀〈事物紺珠〉 䳸雀〈同上〉
雀の老たる者は、背の斑文分明なり、これお麻雀(○○)と雲、親どりなり、卵お出て未久からざる者は吻黄色なり、これお黄雀(○○)と雲、子とりなり、〈○中略〉一種入内すヾめ、俗に訛てみやうないすヾめと雲ふ、昔実方中将奥州配所、にて終る、再び禁庭に帰らんと欲する念ありて、雀に化して殿上の大盤の飯お食ふと、俗に言伝て入内すヾめと雲ふ、然れども別に一種なり、首の色常雀より深く、背も黄色微青にして形稍小なり、此も黄雀と雲、集解に出、又浙江通志にも見たり、雀は和漢共に薬食の用に入る、その糞お白丁香と雲、雄雀のたちふんお用ゆ、飛んとする時の糞、上立して上細く下ひろし、今売者雌雄お混じ、臥屎も雑はる、宜く撰ぶべし、雀頭お用るお雀脳と雲、一名首陽、〈本草匯〉雀卵お和方に雀石子と雲、眼科の書に雀貝と雲ふ、時珍曰、又有白雀雲雲、しろすヾめは希にあり、全身白色なり、唐六典には、白雀中瑞と雲、遁甲図には王者爵禄均則至と雲、然れども飼やうによりても、白雀と為ること、黒客揮犀に見へたり、曰、雀有色純白者、有尾白者、構巣人家、多為祥瑞、余曾見売薬老人責白雀数枚、間何従得之、答雲、雀方出殻未羽時、以蜜和飯飼之乃然と、本邦にも尾白き者あり、又全身白斑ある者、頭のみ白おふたぼうしと呼者あり、皆変生なり、此外にべにすヾめ、しますずめ、かはらすヾめ、きすヾめ等の品あり、
増、べにすヾめは背白赤して、喉の下より羽の方に黒斑あり、羽は黒して白斑あり、尾は黒して觜足は甚赤し、咽脂お塗たるが如し、常の雀より形小なり、ましこに近きものなり、舶来の品にして禽四にあり、又しますヾめ(○○○○○)、一名くろすヾめは、形状尋常のものと同して赤黒し、目の傍と胞とに白毛お雑ゆ、足は赤黄色にして爪は甚白し、此れ亦奇品なり、