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百家琦行伝

唐斎
江戸麻布雑式といへる処に、〈氏お忘れたり〉唐斎といへる儒者ありし、書お能し、もつとも博覧の人なり、〈○中略〉此人つねに雀お愛し、朝飯お喰おはりて後、また一椀の飯おもらせ、庭上にこれお蒔、はたはたと手お拍ければ、たちまち数百の雀むらがり来り、彼飯おはむ事なり、小時ありて亦手おはたはたと鳴しければ、彼雀いづこともなく飛さりて、一羽も居ずなりにける、昼も猶斯のごとく、都て日に三度づゝ食おあたへけるとなり、