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牛馬問

予〈○新井白蛾〉が類縁に、宇(うの)松貞といへる医あり、一とせ夏鍼おならべ置たるに、鉄鍼お紛失せり、尋れども終に不得して止ぬ、翌年の夏のはじめ、徒然して座し居たるに、縁の上へ血したゝり落、不思議に詠め見る所に、大なる蛇落て死にける、此由お審にするに、燕来て年々此家に巣お作るといへども、此蛇のために卵おとられ、生育する事なかりしに、去年の鍼お巣に貯、今年終に敵おとりぬ、物おのづから此理有、是予親しく聞所なり、