[p.0782]
風俗文選
三/譜
百鳥譜 支考
燕もゆかりはわすれぬ鳥也、終日にひるがへり、終日に囀りて、餌にはかならず身おつくさずや、いはゞ江湖の僧の一夜二夜にちぎり捨て、身お雲水にまかせたるが、年お経て後は見しらぬ人もおほかる、されば行脚の身の、人にもおくられ、おのれもおくりたらんに、涙のこぼるゝはいかなる時にかあらん、かの法師の、宿かし鳥とよみつゞけぬるより、孤村に出て夕陽お諦尽せば、誰が家にか今宵もおくらんと、あぢきなき事もおもはるゝなり、