[p.0787][p.0788]
飼鳥必用

放し雲雀お仕込仕様
春八十八夜の日、野にて諦雲雀お取移し、猶若鳥おえらみ、七年程も飼馴し、此鳥お二月末冶仕込、常の雲雀籠より大なる籠お調て、口も広く明け、家の内明り宜敷座舗にて、度々手にて虫お喰せ、毎日座舗へかごお居へ置て如此、夫より籠の戸口お明け、此戸口より鳥の面お出して虫お喰るよふに仕付、是お喰時、ごみ払のよふ成ものお拵へ、白紙にてばれんお付、不開柄の方へ結び付、其先きへ虫お乗て喰せ、暫は是に驚候得共、段々と蜘お喰馴はせ、それより座敷之内にて引出し、かごに入る時も蜘にて引入、日々右之仕込も相馴候はゞ、障子お少し宛切破り、外お段々と見せ、八十八夜過にもなり候はゞ、盛り気つよく、手に喰付よふに成、其時分籠お外庭へいだし、虫にて引出し、是も座敷と庭との違ひにて、座敷のよふには手なれずよし、是も日々相馴候、ばれんにつけ候節庭江引出し、不舞して虫にて籠に入、度々一つ事宛仕込候へば、自然と舞上り、暫くも舞也、総て舞下る折、ばれんお見せ候得ば、其所直ぐに下る也、右の通舞せ候事、度々は惡敷、一日に朝と昼後二度程宛舞候事、盛気ぬけ候得ば、ばれんにも不添、方々舞下るよし、春の内盛り廿日計り舞候事、子飼は鳶烏におぢ気有り、思ふ儘に仕付不相成もの也、野鳥にて七年已上飼置たる鳥ならでは、仕込がたきのよし、日数廿日余も仕込方取懸り、是のみの仕事に致仕付候よし、中々もつてまいり兼る仕よふ也、まづあらまし聞伝へし事お記す、