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守国公御伝記

将軍家御鷹捉飼の雁と雲雀とお、三家三卿溜詰国主等に、毎年恩賜あり、冬の雁は昔より塩に漬たれども、夏の雲雀は生にて数十羽づヽ賜ふ例なれば、鷹匠近村に出た捉飼したる雲雀お、炎天のとき速かに奉るとて、夜お籠て運び、其村々の農民は、兼て其用意おなし、数十人待設る故、農民の労少からざりしに、公○松平定信執政と成玉ひしより、雲雀も雁の如く塩漬になつ、日お経て奉りければ、農民の労なく、且鷹匠近国の鷹場に出て、農民お悩す事も、此頃より絶て止たりとぞ、