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嬉遊笑覧
十二/禽虫
嘉多言に、鶯の子お巣よりおろして、よき鳴の籠にならべて飼そだて侍れば、程なく其声お囀るといへり、其声に三光お鳴およしとすといへり、正章独吟、鶯も三皇の御代おはつ音かな、貞徳が判の長歌、月日ほしと、となふる鳥の、三くわうお、おもひもかけぬ、もろこしの、むかしのみつの、すべらぎに雲々、桜陰比事に、鶯の殊更に囃るに、三光あゆ〳〵と、声のあやきれしたる、雅筵酔狂集に、鶯の月日星となくお俗に三光と称するなり、片言に、日月ほしとなくとごきふせうとなくは、同じ鶯なれども、ならはしがらにて、よくもあしくもなる、堀川百首題狂歌、よみ人不知、山ざとや非時過ぬれば鶯の鳴なる声は五器ふせうとか、三光と呼種々あり、鶯の声は三光お呼とも聞えぬものなり、日光山の三光鳥は、月日星と諦、山鵲は月日星々とかさね、又桑鷹は月星となけども、是も三光鳥の名あり、〈○中略〉又下学集に、まめうましとりと有、次にいふひしりごきも、此鳥の諦声なり、伊勢にてしいのごきと雲ふも、これが諦声によれり、聞なしにて異なるなり、