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重修本草綱目啓蒙
三十三/林禽
啄木鳥 たくみどり〈藻塩草〉 てらつヽき〈和名抄〉 きつヽき〈江戸〉 けらつヽき〈仙台〉 おげら〈東国〉 番匠どり〈下総〉 一名雷公採薬吏〈事物紺珠〉 匠木〈事物異名〉 刴木官子〈盛京〉〈通志〉啄木官〈訓蒙字会〉 遖古里〈郷薬本草〉 刀木官〈説嵩〉
啄木鳥は総て喙細長くして鑽の如く、舌は喙より長くして端に鍼あり、鍼頭鋸歯の如し、木お啄し穿て、舌お以その中の蠹虫お鉤出して食ふ、枝葉の上の虫は多しと雖ども食はず、惟終日木お啄して息まず、脚指前二後二、皆剛爪ありて直に樹上にも能走り上る、至て健なり、大小数品(○○○○)あり、其雀の大さなるお小げら(○○○)と呼ぶ、一名木ねずみ、木はしり、江州目は紅色お帯び、そのめぐり及後白し、觜淡黒、脚淡青、項に赤毛あり、頭頬は灰白相間はり、背は白質黒章、胸白く、腹白黄、尾黒色にして、傍尾黄色灰文、其白頭鳥(ひよどり)より小く、頂深紅にして背は黒白斑駁なる者おおほげら(○○○○)と雲、一名ごいし、〈勢州〉其稍小く頂深紅色にして、喉胸腹並に黄赤色なる者おあかげら(○○○○)と雲ふ、額より頬下背尾皆黒色、頂と頬との間、及翼尾中に白羽及白圏あり、傍尾の末に白文あり、觜脚倶に深灰色、其全身白色微黄なる者おしろげら(○○○○)と雲ふ、眼觜脚倶に淡黄微紅、眼下及項中に少赤毛あり、其つぐみの大さにして、背より尾に至まで、淡綠色にして淡黒文あり、頂深紅色なる者おあおげら(○○○○)と雲ふ、一名きげら、やまつヽき、是山啄木なり、此鳥頭灰白色、額黒く、頬黒くして深紅一点あり、喉白く胸灰色微黄、腹綠色黒文、目紅黄色、觜浅黒、脚綠色、翼の風切黒くして白圏あり、其鴿より大にして頭黄白色微紅、面紅黄色にして並に黒斑あり、背翅黒白斑駁、觜脚青色なる者お、やまきつヽき(○○○○○○)と雲ふ、是亦山啄木なり、その形大にして全身黒色銀光、目黄、その上下喉辺藍色お帯ぶ、觜淡黒微紅、脚灰色、頂に少赤毛ある者お黒げら(○○○)と雲ふ、一名みやまげら、たまげら、仙台の産なり、その大さ小げらの如くにして、背深綠色、翼亦深綠にして小白点ある者は、しまげら(○○○○)と雲ふ、尾は黄色にして小点あり、胸腹純白、臎(おづ)綠色微黄、觜朱の如く、脚黒色なり、その至て小く繡眼児(めじろ)の如く、全身深綠色、頂と脇と少く深紅毛ある者は、いはげら(○○○○)なり、深山に生ず、その一種小げらより小にして、形も相似たるお、ありすひ(○○○○)と雲ふ、目赤く白環あり、頭背淡褐黒斑、喉より腹に至り淡黄黒斑、尾長く淡黄にして黒文あり、脚亦淡黄色、