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甲子夜話

天明の末力、京師の近鄙より白烏お獲て朝庭に献じたることあり、みな人祥瑞と雲ける、然に翌年京都大火し、禁闕も炎上す、其後松平信濃守に〈御書院番頭、もと豊後岡侯中川久貞の子、此家に義子となる、〉会して聞たるは、曰某が実家中川の領内にては、たま〳〵白烏お観ること有れば、軽卒お使てこれお逐索め、鳥銃お以て遂に打殺すことなり、其ゆへは白烏は城枯(しろからす)の兆とて、其名お忌て然り、野俗のならはし也と雲て笑たりしか、