[p.0844]
関の秋風
烏はむくつけき鳥なれど、孝つくす心ばへあはれなり、元日のあけぼの、東の方しらみ行くほど、黒き林の中より、声のみ聞えて飛び行くもおかし、星みえぬばかり、月さえたる夜昼の心地ちして、梢に打ちさはりて鳴きたる又おかし、夏の夕つかた、日もいりはてゝ凉しき頃、ねぐらとひおくれたるが、二つ三つ飛び行くもおかし、雪ふり積りて、庭も野山もこというなきに、独飛びかふもはえありておかし、