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重修本草綱目啓蒙
三十三/林禽
慈烏〈○中略〉
仏法僧鳥(○○○○)の雄は、形ち鳩の如く痩てちいさく、頭淡黒く、羽毛綠色にして腹背碧綠交り、咽の下碧色翼及び尾の端黒色、嘴細くして鳩の如く、脚と共に赤色なり、鳴声ぶつぽうそうと雲ふ、雌は同形にして蚕身淡黒に白毛雑り、深黒の斑あり、喉及び腹白色に黒点あり、嘴淡綠にして脚淡褐なり、天台山方外志雲、念仏鳥声喚阿弥陀仏、華夷鳥獣考に九華山志お引て曰く、念仏鳥大如〓、羽尾黄褐翠碧間而成文、音韻清滑如誦仏声、一名念仏子、唐韋蟾詩、静聴林飛念仏鳥、細看壁画他径馬念仏鳥此有之也、池北偶淡に曰、王得臣塵史安陸有念仏鳥、小於鸜鵒色青黒、常言一切諸仏、宋元憲詩鳥解、仏経言、張斎賢守群日為作舌詩一篇、按に諸鳥各諦声お異にすと雖ども、仏声に疑似する者数品有べきの理なし、鳥声固より五音の別なし、惟音情の紛紜たるお聞て、己が意に迎てこれお解するのみ、然らざれば何ぞ一鳥にして、阿弥陀仏と雲、又一切諸仏と呼の理あらんや、然れども仏法僧鳥お念仏鳥に充つれば、彼弥陀仏諸仏の両義に於て的当せず、余〈○小野蘭山〉謂、仏法僧鳥は羅漢鳥に充つるお穏なりとす、衡岳志曰、羅漢鳥見于羅念菴先生別楚石詩自註、烟霞峯下谷中有鳥類、呼仏声俗名羅漢鳥と是なり、伊藤長胤の輶軒小錄に曰、高野山に仏法僧と鳴鳥あおと雲、日光山に慈悲心と鳴鳥ありと雲こと、昔より和歌に詠じ、人々伝誦することあり、是も唐にあり、蜀都雑抄合せ按ずべし、凡て鳥獣の音、碓磨の声、此方のきヽやうに依て、様々に聞取なり、深山幽谷禅仏の境には、常々仏事お談じ、仏語お誦するに依て、鳥獣の音に仏事に聞なすと見へたり、何事も人の心の呼と知べし、慈悲心鳥(○○○○)は形鷹に似て、大さ白頭鳥より一層大にして、頭背翅尾共に黒し、胸腹淡褐にして細黒の横条三行あり、嘴脚黒しと、桃洞遺筆に見へたり、