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躬恒集
延喜十八年八月十三日、右大臣家〈○藤原忠平〉八講おこなふ夜、于時仏法僧といふ鳥(○○○○○○○)なく、有感 此歌奉る、
あし引の、み山にすらも、このとりは、谷にやはなく、いかなれば、しげき林の、おほかるお、たかき稍も、あまたあれど、羽打はぶき、とびすぎて、春夏多の、時もあるお、君が秋しも、もみぢばの、からくれないの、ふりいでゝ、なくねさだかに、きかせそめつる、
山にすら希に聞ゆる鳥なれど里にも君が時よりぞなく
其ひとも君はつげしもせじ物おいかでか鳥のかねてしりけん
とのゝ御返し
法お思ふ心しふかく成ぬれば里にも鳥のみゆるなるらん