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東雅
十七/禽鳥
杜鵑ほとヽぎす 倭名抄に唐韻お引て、〓鷜はほとヽぎす今之郭公也と註せり、ほととぎすとは〓鷜の諦声なり、十王経に見えたり、倭名抄に見えし所の如きは、我国の中世より雲ひつぎし所によりしなるべし、されど〓鷜郭公もとこれ一物にもあらず、二鳥またほとヽぎすといふ者とも見えず、杜鵑の如きは、此に雲ひ伝へし所と、漢に雲ひ伝へしところと、相合へる事共あり、杜鵑子規等の字は、古人もまた用ひし所とこそ見えたれ、〈李東璧本草に拠るに、杜鵑状如雀鷂、而色惨黒、春暮即鳴、夜諦達旦、至夏猶甚、其声哀切、其鳴如曰不如帰去、田家候之、以興農事、不能為檗、居他巣生子、冬月則蔵蟄と見えしが如き、其形状相似て、其諦声も亦相似たり、此にして卯月に来てに夜半に諦くといふが如きは、春暮則鳴、夜諦達旦也、しでの田長の朝な〳〵よぶと雲ふが如きは、以興農事なり、驚のかひ子の中のほとゝぎすと雲ふが如きは、居他巣生子なり、俊水朱氏も、本国の杜鵑は、其声高くして惨むべし、碧春より諦て、多くは夜諦くと雲ひけり、其馨の高低、其候の早晩はあれど、異なるものとは聞えず、唐韻に見えし〓鷜は、部爾雅に見えし鶻鵃なり、郭公は爾雅に見えし鳲鳩なり、全是別物なり、其詳なる事おば、東璧本草、通雅、正字通等お併見るべし、〉