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重修本草綱目啓蒙
三十三/林禽
鳲鳩 かつこうどり かんこどり かつこどり むぎうらし(○○○○○)〈讃州〉
あわまきどり(○○○○○○○)〈伯州〉 まめうへどり〈甲州〉 まめまきどり〈東国〉 かつぽうどり〈水戸西国〉 一名稭鞠〈埤雅〉 搏黍〈同上〉 〓〓〈韻府〉 拙鳥〈禽経註〉 護穀〈典籍便覧〉 搏穀〈同上〉 擊穀〈事物異名〉 看蚕看火鳥〈戒菴漫筆〉 郭公鳥〈同上〉 布谷〈通雅〉
此鳥四月時分にかつこうと鳴く、声甚高く清みて山谷に震響す、即郭公と自呼ぶなり、俗誤てかんこどりと呼ぶ、此鳥深山ならでは居らず、故に俗諺に幽閑なることおかんこどり鳴と雲ふ、然るに古よりほとヽぎすお郭公と書するは非なり、鳲鳩の形鷂(はいたか)に似て大さ鳩の如し、尾長く目は鷹に似て淡黄褐色なり、郭公は淡赤にしてきざあり、觜黒く下の本黄色末尖りて鳩に似ず、脚は黄色にして赤皺あり、その指前二後二、その爪尖て黒し、全身黒文灰黒雑る、吻と腹は淡黄にして白黒文あり、喉下は微く淡黒お帯ぶ、尾づヽ赤褐色にして端淡青色、尾は灰赤にして白点あり、尾の端白し、農夫此鳥の鳴お聞て、豇豆(さヽげ)粟等お下種するの候とす、此鳥形大なれども、柴鶺鴒(うぐひす)又ほじろの巣にて子お育す、又一種佐州にてかつこうどりと呼ぶ者は、形小くして伯労(もず)に似たり、觜も大抵似たれども末曲らず、其尾微長く頭背肩共に淡赤微黒色、咽胸腹は白色、翅尾共に黒色、脚は黄赤、其指亦前後各二、ふみ分て啄木(きつヽき)の如く、其飛ぶこと最疾し、是八閩通志、福州府志に、郭公頭尾黒而身赤、一名赤鳥と雲、泰順県志に、郭公身赤頭尾黒、と雲ふものなり、又鳲鳩おつヽどりと訓ずる説あり非なり、