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百千鳥

島鵯 餌がい〈はや〉五分え、青味入、
大さ和の鴨によほど小ぶり也、鳥の風常のひよ鳥にかはることなし、声もまたひよ鳥に同じ、能物真似お囀、諸鳥の声お真似る物にて面白きもの也、毛色世に知るごとし略之、むかしより三歳より巣に掛るといへ共、二歳にても随分子おなす物也、能鳥有時は、巣年々多く子出来る物なれども、とかく巣くせ有てよき鳥まれなり、三番子迄能出来る也、玉子は十三日にてかへる、子かへると直に蜘お飼ふなり、十日め又は子のつよきは、九日にても取てよし、よわきは十一日もおくべし、生つよき鳥にて乎も飼立よし、世せうにてはみな四月になり、庭籠へ放すなり、右之通するもよけれども、兎角冬も庭籠へはなし置事よし、四月はじめごろ、盛の見ゆる時、庭籠よりとりて小籠に入、六七日も置、又庭籠へはなすべし、庭籠はせまくても随分よし、世上ともにしまの庭籠は大きく作といへども、さのみそれ程広にも限らず、三尺に奥行壱間あればよし、広きはいかほどにてもあしき事はなし、留木はあまり多く打は惡し、能舞物なれば、かけ障りのなきやうに留木打べし、巣草は野老の髭、又しゆうの毛よし、又美濃紙おほそくたちて入もよし、子はうなぎの粉お交て、まづ二三日は七八分のえにて飼立べし、其中にもよわき子、つよき子にて餌も段々計ひ有べし、巣おなす頃はうなぎお交て用ゆべし、庭籠にては如何程つよき餌お飼ふとも障に(り)ならず、其外いろ〳〵飼かけ、鳥によりて心得有事なれば、ひとつにおぼへては中々ゆかざる物なり、第一鳥の気おはかり見る事おしらざれば、みな間違て、能産巣の鳥も巣おなさぬなり、しかし島ひよどりは、丈夫になすに、産巣は年々出来る也、能子そだてる雌は秘蔵すべし、まれなり、凡子は産ず、世にしまは、舞ながらつがふといふ者多し、夫ゆへ庭籠おひろくして能と言、みな偽なり、やはり留木の上にてつがふ也、見とめたる者むかしより少し、其外鳥の見やう、島鵯には秘事有、口伝、とかく諸鳥ともに見様第一心得あり、