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古今著聞集
二十/魚虫禽獣
宮内卿家隆卿ひざうのひよどりおぎのはといふお、子息の侍従すみよしへもちてくだりたりけるお、とりにやるとて、はやまといふ鳥おかはりにやりたりければ、侍従おぎのはおおくるとて、鳥につけ侍りける、
すゞしさはは山のかげもかはらねどなほふきおくれ荻のうはかぜ、このうたおかんじて、やがて又おぎのはおかへしやるとて、宮内卿、
これも又秋のこゝろぞたのまれぬはやまにかはるおぎのうはかぜ
後久我太政大臣家におもながといふ鵯の有けるお、家隆卿所望せられけるお、おとゞしばしつき見給ひければ、よみてつかはしける、
いかにせん山鳥のおもながき夜おおひのねざめに恋つゝぞなく、すなはちつかひにつけておくられけり、さだめてかへしありけんかし、たづねてしるべし、