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百千鳥

文鳥 〈餌がい〉 〈きび、もみ、米、あわ、〉
大きさ毛色世にしるごとし、奇麗なる鳥也、古鳥若鳥しれかねる物なり、盛りつよき物故、見合ておく時は風子お産て、親鳥のため散々あしゝ巣も能なす物也、しかもせ話なく親鳥飼立る物にて、巣お立て後、親鳥の少し追頃お見て、小籠へ取べし、巣くさは野老の毛、藁のみごのかたお、はかま少しかけて切、是お入べし、まつ大かたは藁にて作り立る物なり、又鴨の腹毛抔入もあり、しかし是は入らぬものなり、巣は春秋になす、玉子産時分、雌よく落るもの也、至て産のおもき鳥也、庭籠の広きはさん〴〵あしきもの也、玉子は十六日にてかへる、粟きびのもやしお飼ふ、又菜おこまかにたゝきて、庭籠へ入置事よし赤土お少しづヽ入置べし、餌にかみ交て子に喰せる物也、子は三十日余も過ざれば巣お立ず、子にはきびと、あわ、えごまも飼ふべし、春はひがんの頃庭籠へ放すべし、余寒つよき年は、其心得にて少し遅く放すべし、又井戸縄の古きお二三寸程づヽに切、て入たるもよし、然共これはあまり巣に引鳥なし、文鳥に巣の時人参おかふ事散々惡し、度々ためして是おしる、初心の者とかく人参お用ゆ、人参お飼ふ時は必雌お落す、秋の巣の時は、きびあわともにもやしの間に合ぬ事有、其時はきびあわともに摺鉢へ入、湯にてしばらくひやし、扠それおさら〳〵とかるくするべし、右のごとくにする時は、上の皮取れて実所計に成なり、是お庭籠の中へ入おくべし、