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飼鳥必用

深山頬白
此鳥京都大坂より出る、まゝ江戸にても取也、勿論大胸小むねとて弐通り、猶大胸の方は年数飼ば、諦音よろしくなくなり、
頬白
此鳥春秋沢山に渡る鳥匙、子は雌雄一向分り兼候、右見分様、泊木へとまる頃、ひかへの爪の先き少し黒み出たるが雄也、但し此子鳥に虫付とて、鈴虫松虫こうろぎの類、或はのじこ川原鶸かやくゞり、又は笛つけとて色々のもの聞せ、よく付候鳥お寵愛いたし候也、外にかけ諦する事甚あしく、外家に入障子おたて、棚などに置諦せる事宜し、弐歳の内晴たる処にてくぜらせ諦すれば其鈴音ぬけるもの也、三歳迄はずいぶんしづかなる処に置てよろし、三歳よりは構なし、右頬白親鳥九州にても、諦方よろしき鳥お所々聞廻り、諸鈴片鈴の諦音お段々聞分、よろしき親鳥お野移し賞美し飼事専ら也、子飼のつけ子なき方、鈴色あしきとて、野鳥お寵愛し、年数三年もかへば、やう〳〵と下音にて諦、四年もたてば、野の通りいつはいになく、いづれ九州は鳥お気長に飼事名人也、総別鳴鳥は気長にして、野の親鳥お取、年おかさね、寵愛する事至つて上手也、