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梅園日記

ぬくめ鳥
雅言集覧雲、後京極鷹三百首、鷹のとるこぶしのうちのぬくめ鳥氷る爪根のなさけおぞしる、西園寺殿鷹百首、空さゆるひとよの鷹のぬくめ鳥はなつ心もなさけ有かな、但此歌確本に見えず、鳥柴雪といふ書に出たり、かの書の異、本なるべし、按ずるに別本にて然も注あり、〈按に臂鷹往来雲、鷹書者西園寺入道相国蟄居百首一冊、園羽林注、〉注雲、ぬくめ鳥とは如何にも寒き夜、小き鳥お生ながら、鷹の両の手にて取かくし、足おあたゝむる也、其朝はなちやりて、此鳥やとらんとて、其へ行ず情おなす也とあり、又前の後京極殿三百首にも、亦注本あり、注雲、鷹の野おかける時は、爪おふかく嗜也、小鳥お殺さずして我こぶしおあたゝめて、明れば放つなり、かれおはなちやり、其方へ三日ゆかざる処お、つまねの情おしると申にや、又按ずるに、此事唐の代よりいひし説なり、朝野僉載〈五巻〉に、滄州東光県宝観寺、常有蒼鶻集重閣、毎有鴿数千、鶻冬中取一鴿以煖足、至暁放之、而不殺、自余鷹鶻不敢侮之、