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甲子夜話
三十
海辺にはみさごと雲鳥いる、鷹の類にして魚お捕ふ食ふ、この鳥海巌数仞の壁立したる所の穴中に巣かふ、かの鳥その捕たる魚お積おきて餅とす、この魚自然の酢気ありて味好し、人これおみさご酢と称す、これお取には梯子など設置き、かの鳥の居ざる時お窺ひ、俄にかしこに住き、かの積魚お下より取りて上お残す、然るときは鳥帰り来ても知らず、若しこれお上積より取ときは、鳥知て後再び来らず、巣おも、他に 移すと雲、