[p.0962][p.0963]
田舎荘子

木兎の自得
鷹木兎に謂て雲、女お見るに、其形おかしげにして、丸きつらにちいさき嘴あり、頭巾(ときん)、鈴懸お著せたらんには、小人島の天狗など共雲つべし、大きなる眼有ながら、昼はあきめくらにして、日輪おさへ見付得ず、うろ〳〵として諸鳥のために笑はれ、夜はやぶのうちにかゞみ居、寝とぼけたる小鳥おとりて喰ふのみ、づくまはしの手にわたり、撞木につながれ、糸お付ており〳〵ひかるゝ時は、ばた〳〵とうろつく体、諸鳥のわらひもことはり也、なまじいに女も四十八鷹の内なれば、嘸口おしく思ふらん、我女がだめに汗お流すといふ、〈○下略〉