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鋸屑譚
越之白山、雷鳥と称するものあり、人まれに見るといへり、其形如雌雉、而較少文采耳、〈○中略〉或以為爾雅所謂鶆者不是、五雑俎曰、雷之形、人常有見之者、大約似雌雞肉翅、其響乃両翅奮撲作声也、此稍為近矣、夏小正雲、雉震吼、余居近山、震時必聞雉声、人謂之合音、物類之感可見矣、又雲、雷不必聞、惟雉為必聞之、余冬序錄、野雉知雷起処、此語によれば、白山の鳥、五雑俎説亦雉の類なり、安房国二山と名づくる処あり、毎歳正月そのあたりの俗群集して雷狩おなす、多く獲てころせば其夏必雷鳴希にして、あれどもすくなし、もし獲物多からざれば、雷も又多しといへち、其形鼬鼹のごとしといふ、此亦一奇事といふべし、是凱雷神之所好之獣乎、鳥獣之有異類、挙げてかぞふべからず、此鳥獣おだゞちに雷とするは亦愚なりといふべし、伯耆風土記雲、震動之時、雞雉悚懼、則鳴踰嶺谷、即登踊也、蜥易之雨雹、虬竜之降雨、雖奪化工之妙、而還真是此化工之妙、何疑之有、