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重修本草綱目啓蒙
三十三/山禽
駝鳥 ひくひどり いしわり(○○○○) 一名大麻〈雀漢書〉 山駝雞〈瀛涯勝覧〉 駝鶏〈典籍便覧〉 条枝雀〈潜確類書〉 駱駝鶴〈事林広記〉 馬駒鳥〈通雅〉 錦駝鶏〈広東新語〉
蛮国の鳥にして和産なし、大鳥なり、紅毛人咬〓吧(じやがたら)の産お貢す、形鷺の如くにして大なり、頂に冠あり、頭巾の如く扁くして長し、刻欠なし、浅黒色、觜は雞觜の形の如にして大なり、頸長くして雁及鶴の如し、毛少くして青皮見はる、喉下胸上に左右相対して、淡紅色の狭囊の如くなる者出、脚は大にして短く、三指前に向ひ後に一指ありて、雞脚に同く黒色、全身黒色羽末皆両岐なれども、獣毛の状の如く見ゆ、尾は見へず、力強くして能重お負ふ、是集解謂ゆる火雞なり、此鳥舌なくしてよく火炭お食ひ石お食ふ、故能食物所不能食者と雲、事林広記に、或焼赤熱銅与之食と雲、通雅に取糸三寸繫白石即呑之良久牽出石如泥矣と雲ふ、蛮国の鳥の図に、ひくひどり数種あり、駝蹄なる者あり、長尾なる者あり、火雞とは別なり、駝鳥卵舶来あり、大さ三四寸長六七寸、殻厚し、彫刻した器物と為ものもあり、其卵如甕と雲、卵大如斗と雲、事林広記に大如椰子と雲へり、
増、釈名の骨托禽は本条と別物なるべし、天保十一庚子年秋、京師京極街善長寺にて観場に供す、形状こヽに説く所の如くなれども、火お食ふこと能はず、梅の大さなる石或は鉄お食ふ、隻緩歩して飛ぶことお得ず、即集解に墨客揮犀お引くものに合す、洛西光明寺の什物に、本条の写真お蔵す、又舶来に青黍皮と雲者あり、和俗あおかはと呼ぶ、其形鮫お扁青(こんぜう)にら塗りたるが如し、これお刀剣或は琵琶の飾とす、これ本条の喉皮なるべし、