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飼鳥必用

駝鳥
此鳥日本へ紅毛国より三羽相渡、猶天明年中、長崎へ持渡しば薩州〈江〉廻る、其後渡たるは大坂鳥屋丸屋四郎兵衛方にて、諸国にて見せものに出し、世の人是お見たり、東都吹屋町河岸にて見せ物に出す、大きさ頭迄四尺計り、羽色黒足は大きく、総羽猪のごとく羽はなく、烏骨鶏の羽のごとく皆毛と見へ、行事馬のかけるごとく、兼而諦声はなし、かける節うなる声あり、喰もの何にかぎらず人よりあたへすれば、丸石木の実にてもたべ申候鳥也、猶其儘せうにて糞に落る、平生飯からいも類餌飼いたし、日には弐升当に飼方也、暖国鳥にて寒おきらひ、塒藁にてかこひ、臥所も藁お沢山に入、其内に留置なり、大坂にては塒の節内に土鳩お数多かこへに入、両方へつみ置、其間へ寝す也、寒しのぎの工夫もつとも成べし、此玉子とて東都へ廻り壱尺余り、玉子紅毛人持渡お長崎にて見たる事有り、火お喰烏にて食火鳥ともいふよし、頭と足は鳥にて胴は猪のしゝと見ゆる、本国にて広原に住居、草苅の者間々追出し、逃去事矢のごとし、外の紅毛人より噺聞し也、勿論足のひかへなし、