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結眊錄

海市の事
海市は蜃楼也(○○○○○○)、仏書に乾闥婆城と雲也、周防にて、浜遊(はまあそび)又竜王遊(りやわうのあそび)とも雲、土人雲、海竜王の浜へ出て遊ぶ也と、周防の医生某在国の時、目擊せりと、其物語に、海中俄に洲渚山郭城楼村落竹樹人物往来歷々たり、暫して滅すと、安芸の厳島にて、蓬萊の島と雲、松下氏異称日本伝に、蓬萊島お厳島の別名とす、誤也、山上に現ずるお山市と雲、四日市にても見れしことあり、越中にては狐の森と雲、常陸の影沼は別なり、影沼は地に人物の往来する影写り見ゆる也、即唐土の書に出たる地鏡なり、