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行縢余錄
出雲
十月は、神あり月とゝなへ、十一日より十七日まで神ありのものいみといへることのありて、御社近き五十田狭之小汀く高波うちよせて、にしきのあやある竜蛇(○○○○○○○○○○)、一つあるは二つもあがれるおきよらなるものへのすれば、わだかまりてうごかぬお、国造とりて御社へ奉るに、日かず十日ほどは、わだかまれるまゝ活ておれり、後はまなこおふさぎいくとせ経ても、かたちそこなはれずといへり、そお見けるに長さ一尺あまりもあるらむ、わだかまりつゝ尾の先平らけく三の角ありて、竜のごと口は頭のさきゞはまでさけ、常の蛇とはいと〳〵ことなり、