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重修本草綱目啓蒙
二十八下/蛇
金蛇 附銀蛇〈○中略〉
銀蛇はしろへび(○○○○)、一名かなへび(○○○○)、〈佐州〉此品希なり、予州には多くありと雲ふ、又和名に銀蛇と呼ぶ者は大腹皮中の小虫にして、甚希なり、長さ二三寸、闊一分許、蛇の形にして、首は竜の如し、体に鱗あり、全身銀色、首は微紅なり、〈○中略〉
按に、しろへびに二種あり、一は常の蛇の変じて白色になるものなり、一は至て希なり、文化甲戌の秋七月二十六日、紀州雑賀川に真の銀蛇お得たり、其性緩にして人お恐れず、長さに尺八寸、全身白色にして、鱗間悉く銀光あり、頭は常の蛇と異にして、扁く鱓(うつぼ)に似て、縦横に赤黄色の条五六あり、眼は黒く、眼辺黄にして舌白し、凡て蛇の類は臭気あれども、此蛇少しも臭気なし、僅に鶏子黄お食ふのみ、二年の後死す、先年紀州庚申堂にて観場に備る者あり、長さ五尺余、全く白粉お傅る如く、小黒斑あり、頭は鱣に似て、目は灰青色、舌は灰白色なり、後ち衣お脱して潔白銀光あり、これ真物なるべし、又肥前佐賀脊振山にて、毎歳四月弁才天の祭に白蛇出ることあり、これ又具の銀蛇なりと雲、又和名に銀蛇と呼ぶ者、先年阿州にて草綿の中よりこれお獲て国侯に献ず、