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西遊記

猪の狩倉の大蛇
予が遊びし前年の事なりし、求麻の城下より六里ばかり離れて、猪の狩倉と雲所あり、此所の百姓弐人、山深く木こりに入りしに、其ふとさ四斗桶ばかりにて、長さ八九尺ばかりなる大蛇草のしげれる間よりさはと出て追来る、のがれ得べうもあらざれば弐人ともに取てかへし、木こる那刀(なた)もて、命おかぎりに働しに、ついに大蛇お打殺ぬ、〈○中略〉かく短くふとき蛇もあるものにや、