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重修本草綱目啓蒙
二十八/下竜
石竜子 とかけ〈和名抄、備前、京、〉 とかげ〈江戸、水戸、佐州、〉 とかき〈京○中略〉
夏月人家墻壁砌石の辺に徐行し、人お見て驚かず、人お螫さず、形蛇に而小く、四足長尾ありて、体に細鱗あり、長さ六七寸にして肥え、茶褐色光あり、一種瘠小くして、長さに三寸、青色お帯び、尾最青碧色なる者お、俗にあおとかき(○○○○○)と呼ぶ、皆雌雄あり、倶に尾甚脆し、若人に擊たるれば便ち断ず、一種山野草莽中に居り、人お見れば甚恐れ走るものお、 しヽむし(○○○○)と雲、一名しヽむしやう(○○○○○○)、〈筑前〉かなきちよ(○○○○○)、〈仙台〉 形守宮(やもり)に似て、瘠長さ六寸許、灰色、或は褐色にして、背に黒条一道あり、脇に黒斑あり、四足に五指あり、是蛇舅母なり、時珍生章沢間者と雲へる草間とは、此虫お指すなり、本草原始に、形大純黒者為蛇医、不入薬用と雲、一種止水浅井中に生じ、形守宮に似て、色深黒、腹赤く尾扁なるものお、いもり(○○○)と雲、古名のいもりに非ず、日州にていもらひ(○○○○)と呼ぶ、是水蜥易、蠑蚖なり、時珍生草沢間と雲へる沢間とは、此虫お指すなり、守宮の条に方言お引て、在沢中者謂之蜥易、楚人謂之蠑蚖と雲、中山伝信錄に、蜥易生水池中、紅腹背有金光と雲、皆いもりなり、蜥易は石竜子と同名なり、一名竜盆魚、〈北戸錄〉竜盤魚、〈物理小識〉石竜子、蛇医、蠑蚖、守宮、皆四足ありて混じやすし、爾雅には一物とす、李時珍の分別お優れりとす、謝肇浙の説は宜からず、