[p.1060]
壒囊抄

いもりのしるしと雲は、何事ぞ、
是和漢共沙汰ある事なり、いもりとは、守宮共書けり、法華経にも侍べり、其本の名は蜥易也、是の血お取て、宮人の臂等に塗事あり、其虫取蜥易、飼以丹砂、体尽赤時、搗之、其血お宮女の臂に塗に、何に洗ひ拭へ共、更に落る事なし、然共有婬犯、其血則消失するなり、此お以て、敢て不調の儀なし、仍守宮とは雲也、されば古詩にも
臂上守宮何日消 鹿葱花落涙如雨と雲り、鹿葱は宜男草也、〈○下略〉