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沙石集
五上
学生之蟻蜹之問答事
ある池の中に蛇と亀と蛙と知音にて侍りけり、天下早して、池の水も枯、食物もなふしてうえてつれ〴〵なりける時、蛇亀お使者として蛙のもとへ時程おはしませ、見参せむと雲に、蛙返事に偈お説て飢渇にせめられぬれば、仁義おわすれて、食おのみ思ふ、情も好も、よのつ子の時こそあれ、かヽる時なれば、えまいらじとぞ返事しける、〈○下略〉