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嬉遊笑覧
十二/禽虫
蝦蟇お投て嬲り殺し、地に少坎お堀り、車前草お、襯(しき)て死たるかへるお其上におき、又車前草お覆ひ、小児其周りに居て、かへるどのお死にやつた、おんばく殿の御とむらひと、声々にいひて祝(まじな)ふに、須臾ありてかへる蘇(よみがへ)る、此事古き事と見えたり、毛詩茉苡の郭璞が疏曰、今車前草大葉長穂、江東呼蝦蟇衣、〈陸璣草木、疏にも、車前草一名蝦蟇衣とあり、〉本草啓蒙に、車前かへるは〈南部仙台〉また漢名お挙たる内、蝦蟇葉〈青浦懸志〉かゝれば、陸奥にてかへるはと雲ふは、彼児戯より名づげて、漢土の名に符合せしなり、〈○中略〉おほばこの神とは、かへるに奇功のあるおいふなり、〈○下略〉