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東雅
二十/虫豸
蛍ほたる 葦原中国に道速振荒振神等(ちはやぶるあらぶるかみら)多有て、夜者(よるは)若耀蜜火而喧響(くにめほやほたるびのさやげりなく)といふ事、旧事紀にみえたれば、此物の名上世にすでに聞えたる也、ほたるとは、たとへば爾雅に蛍火即昭とみえしが如く、ほは火也、たるは昭(てる)也、てるといひ、たるといふは、転語なる也、万葉集抄に、ほとろといふことばお釈して、ほどろとはひかるといふ詞也、ひかる虫おほたるといふがごとしとみえし、即是也、