[p.1090]
重修本草綱目啓蒙
二十七/卵生虫
斑蝥 はんめう〈即斑猫の音〉 一名竜尾〈千金翼方事物異名〉 加乙畏〈郷薬本草〉
漢渡具物なれども、今は渡らず、蛮舶来も形状同じ、長さ一寸許、首に両短鬚あり、背甲に黒と赤黄色との斑あり、本草原始の図に異ならず、腹の色黒し、近来江戸に此虫あり、余もこれお捕得たり、隻斑に微しく紅色お帯ぶ、 又和の斑猫と薬舗に唱ふるものあり、往年唐山よりも来ると雲伝ふ、その形は甚だ異なり、俗名みちしるべ(○○○○○)、じやうめむし(○○○○○○)〈北国〉たいどうとおし(○○○○○○○)〈讃州〉かいどうとおり(○○○○○○○)〈新校正〉 此虫は舶来の者より形小く、長さ八分許、前は狭く、後は広く、行夜の形に似たり、背甲黒色にして碧綠の光あり、黄と紅との小斑お点して美はし、腹の色黒し、山野白沙ある地に多し、径路の間、人に先つて飛ぶこと一二歩、地に下れば必人に向ふ、旋追へば旋飛ぶこと数度にして外に飛去る、山に近き寺社の内殊に多し、此虫形状舶来の者に異なれども、その功は大抵相同じ、