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四季物語
八月
なりはうつくしう玉むしなどいひて、いみじけれど声きり〴〵すはたおりかうろぎにさへおとりて、こえたてぬもあれど、此むしはやむごとなきさちあるものにて、宮のさうにて、何くれの御つぼねにも、御くしげの中、白ふんの中にまろびて、からは人おさへ、野べにすてためるならひなるに、十とせはたとせの後までも、御ものゝ中につゝませおかせ給ふ事よ、かうやうのものに雲井にまうのぼる、昔のかしこき人は、草お耕して、位にのぼりしおさへ、めづらしうありがたき事にものするに、これはやうかはれり、