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古今要覧稿
虫介
てふ〈蝶〉
てふ、一名おこてふ、古名おかはらひこといひ、俗称おてふ〳〵といひ、〈○中略〉漢名のごときも数名ありと雖も、通名は蝴蝶といひ、蛺蝶といひ、〓蝶といひ、蝶ともいへり、説文によるに、蝶は俗字のよしにて、蝶お本字となせり、然れ共、古来より蝶字お以て通用したり、又雅名の如きは、春駒といひ、野織といひ、撻抹といひ、探花使といひ、或は採花使共、採花子とも目せるは、名義皆同じくして、いはゆる蝴蝶の花に遊ぶとも、花に戯るなど、ふるくより詩歌に詠ぜるよりして、しか名付そめけん、又恋花といふ目もあるは、もと蝶は花木花草中の毛虫尺蠖の類、或は蠹蜀の諸虫老時に至りて、おの〳〵脱して蝶となる也、〈○中略〉また此物大小あり、大なるものは蝙蝠の如く、故に蝙蝠蝶の名あり、小なるものは、梅花弁にまがふありて、翼に五色の斑文あるあり、純白純黄紫黒青赤、其色錯雑にして、種類きはむべからず、〈○下略〉