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重修本草綱目啓蒙
二十七/卵生虫
蟻 あり〈○中略〉
凡そ蟻種類多し、〈○中略〉市中に在るもの、赤黒二色あり、体は小なれども、皆力強し、〈○中略〉事物紺珠に、力挙等身鉄善戦有行伍と雲へり、通雅に、小而微黄曰黄蟻と雲ふ、黄蟻(○○)はあかあり(○○○○)なり、庭上に多し、〈○中略〉通雅に稍大、好啖群蟻曰虎蟻と雲、是なり、其内に形長大にして、大頭なる者雑り行く、通雅に、大頭不負曳、若紏率者、故世以惰群者為大頭蟻と雲是なり、この蟻お筑前にては、藤四郎あり(○○○○○)と雲、土州にては庄屋あり(○○○○)と雲ふ、又赤蟻の一種(○○○○○)、至て小なる者あり、徴黒色お雑ゆ、常に木中に住み、遠く連行す、事物紺珠に、黄蟻細如灰と雲是なり又黒色の蟻(○○○○)、数品あり通雅に玄蟻猶蕃、遇羶負曳と雲ひ、泉州府志に、有黒蟻作穴地中と雲ふ、皆くろありなり、〈○中略〉又長さ一分許にして、肥腹なるもの、常に木中に住み、年々窠お換るに、遠方より卵お含抱して連行するあり、此蟻は臭気あり、通雅に、有臭蟻(○○)、好縁木為窠と雲是なり、又一種こしぼそ(○○○○)と呼ぶものあり、長さ一分余、色黒くして光あり、尾刺上に向ふ、故に人お螫す、常蟻の尾刺下に向ふに異なり、朽柱及旧困中に穴居す、通雅に、有蛆蟻、状如黒蟻化而羽、能螫人、爾雅所謂丁蟻也と雲ひ、泉州府志に、有走馬蟻、作穴依樹能螫人と雲是なり、又山中に居る者、形大にして長さ七八分、或五六分なるあり、 やまあり(○○○○)と呼ぶ おほあり(○○○○)、〈和名抄〉此にも赤黒二色あり、釈名の註に、大者為蚍蜉と雲是なり、