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栗氏虫譜

江都官家に、蜂堂(○○)お庭上に設て、蜜お採て戯とし玉ふことあり、堂内部局お構へ、其上の奥所、蜂王の座あり、群臣次第に列座して、自然に官職あるが如し、下に聚花の会場あり、大窠お綴る、是密の在処なり、堂の下辺に、小竅並べ開て、五門に比す、其竅外に五員の蜂卒並坐して、各門お守護す、来蜂の貢花お〓み、群蜂早晨に堂お出で、午時に花蕊、及精液お含み来て、衙門に入るとき、〓蜂是お撿察して入しむ、若し花お含まずしぶ入来ものあれば、厳しく逐返して入れず、争拒く者あれば、群蜂これお刺殺す、或は風雨、堂お侵し、又雑人の毎に堂お窺ふことあり、或は糞穢の気、堂に迫り、或は堂衙破壊することあり、大黄蜂又は蟻蛛等の堂中に聚ることあり新に喪お受たる人、月信婦人等の近き視が如き、群蜂悉去て帰らず、若新に堂衙お築て、清潔なる時は、即ち帰り至ることあり、或は事にふれて、満堂の群蜂尽死することも、まヽあることなり、故に堂お設の家慎戒べし、夫々の勤行の役あること、右の図〈○円略〉お以て察すべきものなり、