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東雅
二十/虫豸
蝿はへ 日神天磐屋戸に籠り給ひし時、万神の声如狭蠅鳴といふ事、旧事紀に見えしお、古事記には、狭蠅那須としるし、又旧事紀には、天孫天降り給はむとし給ひしとき、此国に多に道速振荒振神ありて、又磐根木株、草之垣葉、猶能言語、夜は蛍火の如くにして喧響、昼者如五月蠅(さばへ)而沸騰としるされ、日本紀も旧事紀によられたり、はへの義は不詳、〈(中略)凡そ虫の名に、はといふおもて呼ぶは、皆羽あるものなり、(中略)旧事古事日本紀等に見えし所に拠れば、はへとは其声あるに因りて、雲ひし所に似たり、〉