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風俗文選

焼蚊辞 嵐蘭〈○服部〉
大盗あに枢戸お穿むや、女がふるまふお見るに、帳おたるゝ時は、其翩々の間おうかゞひ、垂おはつて、縦横の透間おたづね、すべて少破の所おもとめ、人のしりへにつきて、入らむとはかる、鳴呼跖蹻が徒にはあらじ、すべて女がおこなふ処、猛き事もなく、たのしむ事もなし、あはれなるかたにも、やさしきかたにもあらず、たゞにくむべきものゝ甚しき也、蚊、蚊、帳中の蚊、女おやくに辞おもてす、女此ことばおきく時は、我手に死すとも、みづからたれりとせよ