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重修本草綱目啓蒙
二十八/化生虫
〓螽 おほいなご(○○○○○) おいたち(○○○○)〈京〉 とのさまばつた(○○○○○○○)〈江戸〉
秋時多く出、形は螽斯(ぎす)に似て首円目大なり、身長さ一寸余、翼あり、その色或は綠或は褐、その鳴くこと股お以て相擊た声おなす、又一種大なる者あり、 くるまばつた(○○○○○○)〈江戸〉と雲〈○中略〉又一種形小にして、長さ七八分許なる者あり、いなご(○○○)〈京〉卜雲ふ〈○中略〉いなはつたぎ(○○○○○○)〈南部○中略〉等の称あり、此虫にも綠褐のに色あり、皆稲に集り、葉お食ひ、害おなす、〈○中略〉 蟿螽はいなごまろ〈和名抄〉 いねつきこまろ〈同上〉 せうらいむし〈京〉 おしよらいねぎ(○○○○○○○) むし(○○)〈共同上○中略〉 せうれうばつた(○○○○○○○) ばつた(○○○)〈共同上○江戸、中略、〉 ほとけのうま(○○○○○○)〈霙州○中略〉 此虫は螽斯より狭瘠首尖りて、両角ならべり、綠色褐色のに品あり、雄なる者は長さ一寸許、雌なる者は長さ一寸半より三四寸に及ぶ者あり、背後より尾に至るまで色赤し、翼に掩れて見へず、飛ぶときは、翼、股にふれて声あり、故にばた、ばたと名く、その内羽の黄色あらはれて美はし、促織志に、螞蚱之種三、倶不鳴青翼而黄身、躍近而飛遠、飛則見其襲羽、或紅焉或黄焉、曰螞蚱、其青而長身者曰扁蛋、嬉者股繫而提之、使飛不止、以観其襲羽と雲ふ、〈○下略〉